災害看護
Disaster nursing
研究活動
国内外の研究者と共同して、災害看護?健康危機管理に関する研究に取り組んでいます。
代表的な研究活動をいくつかご紹介します。
- 大規模災害被災地域における持続可能な地域ケア体制の再構築戦略
研究期間:2020年4月~2023年3月(予定)
研究チーム:増野園惠、林知里、松尾香織(武庫川女子大学)、藤井愛海(日本赤十字豊田看護大学)、勝沼志保里(宮城大学)、尾島俊之(浜松医科大学)、澤田雅浩(兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科)
研究概要:本研究は、被災地域コミュニティが、災害からの復興をすすめ、誰もが安全で安心な生活を送ることができる持続可能な地域ケア体制を再構築するための戦略?方略を明らかにすることを目的に、次の3点を目標として取り組んでいる。
- 過去の国内外の主要災害における地域コミュニティの復興をすすめた取り組み事例を収集?比較検討し、既存の取り組みにおける戦略?方略を明らかにする。
- 東日本大震災の被災地におけるアクションリサーチにより、当地における持続可能な地域ケア体制を再構築するための具体的方法を明らかにする。
- 1)と2)の結果を統合し、持続可能な地域ケア体制を再構築するための戦略?方略をまとめ提案する。
*本研究は、JSPS科研費基盤研究(B)20H04021の助成を受けて実施している。
- 万象城体育_万象城体育官方网-【app下载】感染症アウトブレイクが保健医療従事者に与える心理社会的影響とその低減に向けた方略
研究期間:2020年6月~2021年3月
研究チーム:増野園惠、梅田麻希、林知里、朝熊裕美 他
研究概要:本研究の目的は、万象城体育_万象城体育官方网-【app下载】感染症のアウトブレイクが保健医療従事者に与える心理社会的影響を明らかにするとともに、人々の命と健康、安全を守るために職務に従事する保健医療従事者が感染症アウトブレイク下の困難な状況にあっても心身の健康を保ち役割を遂行できるための支援方法とその提供体制を探究し、政策提言に繋げることである。
本研究は2つのアプローチで実施する。
1つ目は、公衆衛生上の危機(感染症アウトブレイクおよび災害時)において保健医療従事者が体験するスティグマに関する研究論文および各種ガイドライン等のレビューを行い、支援のためのエビデンスをまとめる。
2つ目は、国内の保健医療福祉等の現場において新型コロナウイル感染症アウトブレイク下で職務に従事した保健医療従事者を対象とした、ストレス調査およびストレス軽減に向けたセルフケア強化の介入による実証的研究である。
*本研究は、兵庫県立大学万象城体育_万象城体育官方网-【app下载】関連研究の助成を受けて実施した。
- Health workforce development strategy in health-EDRM: evidence from literature review, case studies and expert consultations
研究期間:2020年6月~2021年12月(予定)
研究チーム:(代表)Kevin KC Hung (The Chinese University of Hong Kong), 増野園惠, Francesco Della Corte (University of Piemonte Orientale), 江川新一 (東北大学), Bettina D. Evio (University of the Philippines Manila), Alexander Hart (BIDMC/Harvard medical School), Hai Hu (West China Hospital of Sichuan University) 他
研究概要:災害リスクの低減は国際的な課題である。WHOは2019年に災害健康危機管理枠組み(Health Emergency Disaster Risk Management Framework: Health-EDRM Framework)を発表し、コミュニティ、国、および保健医療システムのレジリエンスを構築するための包括的な災害リスク管理について説明している。エビデンスに基づく医療従事者の育成?強化はHealth-EDRMの鍵となるものの、教育?訓練プログラムに必要となる能力の特定や、必要な医療従事者の確保?動機付け?派遣?調整のための戦略を明確にしていくためには、依然としてエビデンスが不足している。本研究プロジェクトでは、包括的な文献レビュー、ケーススタディ、専門家によるコンセンサスを通して、Health-EDRMにおける医療従事者の育成?強化のためのエビデンスの探索とエビデンス構築に向けた戦略を検討する。
*本研究は、WHOと契約に基づく研究プロジェクトである。
- 平成28年熊本地震における高齢者の健康問題とニーズに関する調査
研究期間:2018年~2019年
研究チーム:増野園惠、梅田麻希、林知里、松尾香織
研究概要:災害時における高齢者支援対策に活用することを目的に、高齢者の被災後の生活と健康問題および健康生活上のニーズを把握し高齢者の災害に対する脆弱性を検討した。平成28年熊本地震の被災地域に居住する65歳以上の住民を対象に、地震後の生活状況、地震前後のおよび地震から3年後(調査時点)の健康状態に関するアンケート調査を実施した。高齢者の地震から3年後の健康状態には、被災経験(避難期間の長さ、避難場所の地震後の体調不良、地震後の福祉サービスへのアクセス困難)、および被災後の生活の変化、(食習慣の変化、日常生活活動-外出、家事?仕事、人づきあい-の減少、経済的困難の経験が影響していた。また、家事?仕事時間の減少や災害後の体調不要、人づきあいの減少は、介護認定度の上昇リスクを高める要因となっていた。
*本研究は、WHOと契約に基づく研究プロジェクト「Development of Specific Care Strategies to Maintain and Recover Survivors’ Health after Disasters」の一部として実施した。
過去の研究成果
〇災害時の看護支援?ケアガイド
科学省21世紀COEプログラムとして採択された『ユビキタス社会における災害看護拠点の形成』(2007~2012年)による研究活動を通して、災害時の看護支援?ケアガイドを作成しました。災害時要支援者である高齢者等の災害への備えをすすめるための支援、災害発生時には健康被害をできるだけ小さくするように避難所や仮設住宅等で行う支援?ケアのポイントをまとめています。また、災害時にボランティアで看護支援にあたる際の要点も『知恵袋』として整理しています。
<看護ボランティア活動>
?災害時の看護ボランティア活動の知恵袋(直後から中期:避難時期の支援活動) .pdf
?Tips on Health Care Volunteer Activities by Nurses in the Event of Disaster.pdf
?被災地域外に開設された避難所における看護ボランティア活動の知恵袋.pdf
<高齢者への支援>
?災害時に避難所で高齢者の看護にあたられる皆様へ.pdf
?災害時に避難所で高齢者の看護にあたられる皆様へ(ポケット版) .pdf
?災害後に仮設住宅で高齢者の看護にあたられる皆様へ.pdf
?高齢者に必要な災害への備えと対処.pdf
?災害からの復興に向けて‐避難所での健康と生活‐.pdf
?災害からの復興に向けて-仮設住宅での健康と生活-.pdf
このほか、<こどもへの支援><妊産婦への支援><がんの方への支援><慢性病の方への支援><こころのケア>についてのパンフレット等も作成しています。詳細をお知りになりたい方は、当研究所までお問合せください。
研修活動
〇公開講座
災害看護および災害看護教育に関するテーマで、看護職や看護教員等を対象とした公開講座を開催しています。
開催年度 | 講座名/テーマ |
2019年度 | 『災害看護教育』講座:シミュレーションで学ぶ避難所ケア |
2018年度 | 看護教員?指導者のための『災害看護教育』講座 |
2017年度 | 看護教員?指導者のための『災害看護教育』講座 |
2016年度 | 災害看護の教え方 |
2015年度 | 災害看護の教え方 |
〇出張講座等
地域住民や防災関連の活動に従事される方に向けては、“災害時に自身や家族の健康を守る”ことに視点を置いた災害への備えや応急処置などの研修を提供しています。また、看護職?看護管理者に向けては、災害看護の基本や病院等での災害への備え?危機管理についての講義を行います。出張講座等の相談をお受けしています。
教育活動
〇大学院における災害看護グローバルリーダーの育成
看護学研究科共同災害看護学専攻の専任教員として博士課程の教育に関わっています。
共同災害看護学専攻における災害看護グローバルリーダー養成プログラム(Disaster Nursing Global Leader Degree Program: DNGL)は、日本初の国公私立5大学(高知県立大学、兵庫県立大学、東京医科歯科大学、千葉大学、日本赤十字大学)による共同大学院です。詳細はこちら。
また、2021年度からはDNGLの後継プログラムとして、新たに看護学研究科看護学専攻において博士前期後期課程の5年間で災害看護グローバルリーダーを育成するコースが始動します。DNGLで共同してきた5大学は新たに5大学災害看護コンソーシアムを形成し、教育?研究等で協力体制をとります。詳細はこちら。
ネットワーク
APEDNNは災害?健康危機に対する備えや対応における看護の貢献を高めることを目的として、アジア太平洋地域の連携強化を推進する看護専門職ネットワークです。ネットワークには、アジア太平洋地域の 40の国と地域、 240名を超えるメンバーが参加しています。当研究所からは増野教授がコアメンバーとして参加しています。ネットワークでは、コアメンバーらによるウェブ会議での情報交換のほか、 1~ 2年に 1回は、研究会議を兼ねた対面での会議を開催しています。詳細は こちら(英語のみ)。
〇WHO Thematic Platform on Health Emergency & Disaster Risk Management Research Network:TPRN
TPRNは、2018年に発足した災害?健康危機管理に関するグローバルリサーチネットワークで、災害?健康危機管理に関する世界各地域の有識者を中心として構成されています。神戸にあるWHO健康総合開発研究センター(WHO神戸センター)が事務局を務めており、当研究所からも災害看護学の立場からTPRNに参加しています。