2023.04.21
プレスリリース 理学部?理学研究科

ミトコンドリアの機能不全と関連する新しい細胞内現象の発見~異所性代謝ストレスの発見~

名古屋市立大学大学院理学研究科の中務邦雄准教授のグループは、兵庫県立大学大学院理学研究科の水島恒裕教授、京都大学大学院医学研究科の杉浦悠毅准教授、九州大学大学院農学研究院の松本俊介助教、名古屋大学大学院理学研究科の嘉村巧教授、福岡女子大学国際文理学部の奥村文彦准教授らのグループと共同で、ミトコンドリアの機能不全に関わる新しい細胞内現象を発見しました。

ミトコンドリアの機能不全などが原因で、ミトコンドリアのタンパク質が本来とは異なる場所に局在化すると、細胞全体の機能障害を引き起こすことが知られています。これは、誤局在したタンパク質が正しい立体構造を形成できず、生存に必須なタンパク質を巻き込んだ凝集体を形成してしまうからだと考えられています。しかし本研究において、ミトコンドリアのクエン酸合成酵素1 に焦点を絞り解析したところ、サイトゾルにおいても活性を有した立体構造を形成できるだけでなく、異所的な代謝反応を起こすことで、細胞内の代謝恒常性を破綻させることが分かりました。このような状況に対して細胞は、クエン酸合成酵素を分解、あるいはタンパク質の新規合成を抑制することで対処しますが、限度を超えると対処しきれず、細胞増殖が著しく阻害されることも見出しました。ミトコンドリアのタンパク質が誤局在する現象は、神経変性疾患※2に関わるタンパク質の蓄積によっても引き起こされることが示唆されています。

本研究は、ミトコンドリアの機能不全に起因する細胞障害の新しい機序-異所性代謝ストレス-を明らかにしたものであり、変性神経細胞内でおこる現象の理解にもつながると期待されます。本論文はScience Advances 誌のオンライン版で2023年4月14日(米国東部時間)に公開されました。

※1 クエン酸合成酵素
アセチル CoA とオキサロ酢酸からクエン酸を合成する酵素で、ほぼ全ての生物に見られる。 TCA 回路の第一段階の速度を調整する。

※2 神経変性疾患
神経細胞のなかで、脳や脊髄の特定の神経細胞群が徐々に変性し、機能が失われていく病気。アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症などを含む。

詳細

別紙のとおり

問い合わせ先

兵庫県立大学大学院理学研究科 教授 水島 恒裕
TEL:079-267-4938
E-mail:mizushi@sci.u-hyogo.ac.jp

兵庫県立大学播磨理学キャンパス経営部 総務課
TEL:0791-58-0101
E-mail:soumu_harima@ofc.u-hyogo.ac.jp

同時資料提供先

兵庫県教育委員会記者クラブ、西播磨県民局記者クラブ、中播磨県民局記者クラブ、中播磨県民センター記者クラブ
(名古屋市立大学から)
文部科学記者会、科学記者会、厚生労働記者会、名古屋教育医療記者会

一覧へもどる