再導入コウノトリの放鳥後の分散を最小限に抑える手法の組み合わせを解明
兵庫県立大学大学院地域資源マネジメント研究科博士後期課程の桑原里奈と同研究科兼兵庫県立コウノトリの郷公園の出口智広准教授、元教授の大迫義人博士、同公園の船越稔の研究グループは、日本で再導入されたコウノトリの放鳥後の分散を最小限に抑えるための手法を明らかにしました。
生物多様性の損失への懸念が高まる昨今において、再導入の取組みは、その解決策として期待されていますが、成功率は高くありません。再導入した動物が放した場所から遠く分散してしまう長距離分散は、取組みの失敗を招く主な原因として挙げられています。
本研究では、再導入した鳥の放鳥後の分散を最小限に抑える放鳥方法の解明を目的として、日本で再導入されたコウノトリの放鳥後1年目の分散範囲の大きさと距離に及ぼす技術(ハードリリース?ソフトリリース)と対象個体の年齢(幼鳥:0歳?亜成鳥と成鳥:1~3歳)の組み合わせ、および飼育履歴(飼育ケージ間の移動回数、飼育ケージ内の同居個体数、放鳥前の訓練日数、育ての親は里親か生みの親か)の影響を調べました。
調査の結果、放鳥場所へ輸送後即座に放す技術(ハードリリース)と、放鳥場所でしばらく飼育したのち放す技術(ソフトリリースの違いに拘らず、0歳で放鳥したコウノトリには、広範囲に分散し、分散距離が長くなった個体がいました。他方、1~3歳で放したコウノトリは、放鳥技術に拘らず全て放鳥場所の周辺にとどまりました。ハードリリースは、放鳥場所での飼育を必要としないため、ソフトリリースに比べコストが小さい放鳥技術です。したがって、コウノトリや本種と同じ生態学的特徴を持つ鳥類の亜成鳥?成鳥を放す場合、ハードリリースをお勧めします。また、一部が大きく分散した0歳のコウノトリの飼育履歴は、飼育ケージ間の輸送や訓練が行われず、同居者は家族のみ(親とその年生まれた子)で、巣立つまで里親に育てられていました。このような飼育履歴も、分散範囲と距離に影響を及ぼす 要因 となる うる ことが示唆されました。
本研究結果は、今後実施される再導入の取組みがより良いリリース方法を選択する際の、貴重な洞察を提供し、効果的な保全策の立案に貢献します。
?本研究の成果はアメリカの鳥学会 Association of Field Ornithologists の発行する国際誌『Journal of Field Ornithology』に2024年2月7日から早期公開されました。
研究詳細
論文情報
論文タイトル
Which combination of release techniques and ages minimizes post-release dispersal during Oriental Stork reintroduction?
(コウノトリの再導入における放鳥後の分散を抑える放鳥技術と年齢の組み合わせはどれか?)
著者名
兵庫県立大学大学院地域資源マネジメント研究科 博士後期課程 桑原里奈
兵庫県立大学大学院地域資源マネジメント研究科 大迫義人 (元)教授
兵庫県立コウノトリの郷公園 船越稔
兵庫県立大学大学院地域資源マネジメント研究科 出口智広准教授
雑誌?号? doi
Journal of Field Ornithology
DOI:https://doi.org/10.5751/JFO-00412-950106
問い合わせ先
桑原里奈(くわばらりな)
兵庫県立大学大学院地域資源マネジメント研究科 博士後期課程
TEL:0796-34-6079
E-mail:0713.rina.1010@gmail.com
同時資料提供先
兵庫県立コウノトリの郷公園
〒668-0814 豊岡市祥雲寺128
TEL:0796-23-5666