地域や人が変わる。それが大学?地域連携の醍醐味。
柴崎 浩平(環境デザイン系/EHCコーディネーター教員)
2022年4月からEHCのコーディネートを務めている柴崎先生(環境デザイン系)に,地域連携のことや研究者になった背景,EHCのことを聞いてみました。
柴崎浩平(しばざき こうへい)
1988年大阪生まれ。専門は,農業農村経営学,農村計画学。キーワードは,農村,農業,ため池,都市農村交流,移住促進,アクションリサーチ,大学?地域連携など。
2017年,神戸大学大学院農学研究科博士課程修了,博士(農学)。同大学院特命助教などを経て,2022年4月より現職。
- どんな研究をしてるんですか?
地域資源の適切な管理?活用や,その担い手となる人材の確保?育成に向けた仕組みづくりに関する研究をおこなっています。その仕組みづくりの一環として,大学?地域連携活動に従事しています。
詳しくはこちら(→リサーチ?マップ)
- どういった経緯で研究者になったのですか?
「気づいたら研究職の道を歩んでいた」という感覚で,,,研究者というキャリアを歩んでいることに自分でも不思議に思う時があります。また,学生の頃は大学の行事などにもあまり参加せず,大学もあまり好きではなかったので,大学に所属していることも自分では不思議に思います笑。
ただ,好奇心は強い方でした。もともと,絵を描いたりすることが好きで,美術専攻で大学に入ったのですが,色んな国の民家に泊まって現地の暮らしを知りたいという思いから,学部3回生の頃に1年間休学して海外に遊学したりしてました。また,これまで縁もなかったボランティア活動に参加してみたり,,,とにかく自分とはかけ離れた人に会ったり,知らない世界に行ってみたいという感覚は強かったのではないかと思います。
そんななか,「限界集落」である京都府の山奥の集落(住んでいる人は4,5名)などで,雪かきボランティアなどに関わるようになり,農村に興味を持つようになりました。学部卒業論文のテーマは,農村への移住促進であり,農村に若い人を増やすためにどうしたらいいいかといったような単純な疑問からスタートしました。
- 就職活動などはしたのですか?
農村に関わる地域づくりコンサルタントなどをみてみたのですが,就職したいと思えませんでした。というのも,就職活動や卒論執筆をするなかで,農業や農村のことについて全然知らないということに気づいたからです。そこで農学部の授業を受けるようになり,ひとまず,修士課程にいこうと考え,奨学金を活用し進学しました。
修士課程に進学したものの,アカデミックの世界は自分と縁遠いものだと思っていました(小難しい話が多く,,)。しかし,アカデミックの世界に対する認識は,修士課程で大きく変わったと思います。というのも,修士以降,ゼミや現場,学会などで,様々なスタイルの研究者や研究志望の同世代の人達と出会うなかで,その面白みを感じるようになったからだと思います。なかでも,地域に直接的なインパクトをもたらす実践活動と研究活動を両立させるというか,実践活動のなかで見えてきた課題に関する研究を実施していく,といったような研究スタイルに憧れを持つようになりました。しかし,修士論文などは書いてはみたものの,納得できるようなものは書けず,フィールドにお返しできるようなレベルでないというか,とにかく不完全燃焼感があったので,博士課程まで進んだという感覚です。
- 学生の頃は地域連携とどのように関わってきたのですか?
学生の頃は,神戸大学と丹波篠山市の連携プロジェクトに携わってきました。そこでは,地域の方々と話し合いながら,今後の地域のあり方を検討する計画づくりのプロジェクトに学生メンバーの一人として関わったり,農村における学生の活動拠点となる古民家を改修したりしていました。学生の頃に通っていた地域に,2022年の夏,久しぶりに訪れたのですが,地域の方に温かく迎えていただくなど,関係性が続いているのは嬉しく思います。
本格的に関わり出したのは,「東播磨フィールドステーション(以下,東播磨FS)」のコーディネーターを務めてからです。東播磨FSは,加古川市に2018年6月に開所した,ため池を中心とする地域資源の適切な管理や活用に向けた地域の研究?交流拠点です。私は,東播磨FSの立ち上げの頃から,コーディネーターとして関わっており,現在も深く関わっています。
- 現在はどういった地域連携活動をおこなっているのですか?
ため池管理者(農家)や地域づくりコンサルタント,エンジニアのみなさんと「ため池みらい研究所」という一般社団法人を立ち上げ,東播磨FSのコーディネートをおこなっています。
立ち上げメンバーと月1回理事会を開催し,農村を豊かにしていくために,「もっとこういう取り組みをしていくべきだ」とか「こういうところが困ってて,,なのでこんな取り組みしていきたい」とか「それだったら,こんなことやっていったら面白いよね」といった話し合いをしています。ただ,メンバーは20代?70代と幅ひろい年代,職種,経験を有する人たちであり,始めた頃は,バックグラウンドが違ったり,話し合いの作法?流儀が異なっていたりで,まともな話し合いになっていなかった部分もありました。が,回数を重ねたり,協働作業を通して,実り多い話し合いができるようになってきています。
- 大学と地域の連携,どういう所に面白みを感じているのですか?
地域社会のなかで何か新しい試みをおこなっていく際,1組織?個人ができることは限られており,「多様な主体」の連携の必要性があり,そこには大きな可能性があると感じています。そのためには,先述した理事会なども一つの例ですが,異なる主体?立場が大きく違う人達と対話を重ね,違いや可能性に気づくことが必要になってきます。そういった対話の中で,人や地域が変わったりしていく,その過程に面白みを感じています。
また,2023年度は研究だけではなく,教育という側面にも力を入れました。具体的には,ため池?農業?農村の課題に地域と協働で取り組む万象城体育_万象城体育官方网-【app下载】プログラムである「ため池アクション」に取り組みました(EHCとして主催した特別フィールドワーク)。学生はもちろん,学生を受け入れるなかで地域にも様々な気づきがあり,地域からは来年度も学生を受け入れたいという声をいただいています。
- EHCではどういうことをおこなっているのですか?
学生が地域に出て活動する,その仕組みづくりをおこなっており,地域に出るきっかけづくりや,地域での活動を安全に?活発におこなえるような取り組みをおこなっています。
例えば,「教員?学生プロジェクト」のサポートをおこなっています。EHCには,教員が主導する「教員プロジェクト」と学生団体が主導する「学生プロジェクト」があり,200名近い学生が何かしらの地域連携プロジェクトに関わっています(2024年3月時点)。EHCのコーディネート教員として,これらの活動に必要不可欠な,ヒト?モノ?カネ?情報といった資源を確保しやすい環境づくりをおこなっています。
例えば,学生や教員が集う場づくりをおこなってきました。着任して早々,各学生団体メンバーと話す機会を持つなかで気づいたこととして,コロナ禍で活動が制限されているなか「何かやっていきたい」と悶々とした思いを抱えている学生が多いことや,学生団体同士のつながりがほとんどないことなどがわかりました。そこで,EHCとしてイベントに参加?企画し,学生団体?教員同士の交流の機会を持つようにしたり,日頃から活動の様子や抱えている課題などを把握しやすくするための場づくりなどをおこなってきました。
- 柴崎先生も教員プロジェクトを持たれているんですか?
はい。私個人としても「ため池みらいプロジェクト」という教員プロジェクトを主導しています。プロジェクトの内容としては,活動実績報告書,学生メンバーの声は以下のリンクから閲覧できますので,興味のある方は閲覧?問い合わせ願えたらと思います。
- EHCの今後の展望はどのように考えていますか?
まずは,学生が地域に出るきっかけを増やしていきたいです。学生が地域に出るきっかけとしては,「教員?学生プロジェクト」のメンバーになることが挙げられますが,それ以外のきっかけとなるよう,先述した授業「ため池アクション」を企画?実施しました。 これらの活動を,様々な専門領域の先生方や地域と連携しながらブラッシュアップしていけたらと考えています。複数の専門領域を組み合わせてプロジェクトを進める,これは環境人間学部の強みだと強く感じています。例えば,2023年度からしている「草刈りエクササイズ」は,スポーツ科学が専門の森先生と連携していこう,という流れから発足しました。そういった活動を展開し,学生が地域に出るきっかけを作っていきたいです。
また,きっかけづくりだけでなく,学生が地域に出た後の活動をより活性化?充実化させる取り組みを強化していきたいです。大きくは,活動の中での様々な気づきが,系選択,進路選択,大学院進学などの岐路にプラスの影響を与えるような,そんな地域連携活動を促していきたいです。
環境人間学部では,2回生になるタイミングで所属コースの選択,3回生になるタイミングでゼミの選択がなされ,各ゼミ教員主導のもと研究活動がスタートします。入学時から明確な意向を持つ学生もいますが,多くの学生はコース?ゼミ選択の際,迷うことになります。また,本学の学生は,地元(兵庫県)に就職する学生も多くみられます。「地域のためになる」ってどういうことなのか,リアルな体験を自分の言葉で語れるような,そんな機会を作っていけたらと考えています。
(2024年3月作成)